2020.06.19 「Einstein AI で Salesforce は進化する:(6) Sales Cloud Einstein - 生産性向上の鍵は AI にあり(前編)」
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お世話になっております。
ウフル カスタマーサポート Salesforce 担当の 後藤 でございます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
6月ももう後半、徐々に「3月までの日常」に戻りつつあり、私も基本的に出社するようになりましたが、通勤電車は3月以前に比べるとだいたい7割くらいの乗車率のようです。
これは「テレワークが定着しつつあり、在宅で対応できるようになった方々の分が減少した」と言えるのかもしれません。
テレワークと親和性の高い Salesforce のコンサルである私自身も、ユーザの皆様と共有すべき事例はまだまだありますので、まだまだテレワークを積極的に活用して、「気づき」を得るように努めていければと思います。
さて、集中企画としてお送りしております「Salesforce Einstein」シリーズ、先週までは「予測ビルダー」「Einstein Discovery」という、プラットフォーム機能としての Einstein のご案内が続いておりましたが、今週と来週は、Einstein のもう一つの柱ともいえる、標準アプリケーションの組み込み Einstein 機能、「Sales Cloud Einstein」についてご案内いたします。
Trailhead: 「Salesforce Einstein の基礎 - Einstein の使用開始」
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/get_smart_einstein_feat/get_smart_einstein_feat_basics
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Einstein 標準搭載アプリケーション
前のセクションで説明したように、AI はすでに使用されているアプリケーションに埋め込まれているため、本質的に Salesforce UI 全般を通じて登場します。Einstein もほぼ同じように機能します。消費者アプリケーションと同じように、Einstein はすべての Salesforce アプリケーション (Sales Cloud、Service Cloud など) に AI を内蔵のスマートアシスタントとして注入します。これにより、あらゆる役割や部門、業種のビジネスユーザが毎日使用する Salesforce 商品の内部で直接、アシストを受けられるようになります。
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本機能はSales Cloudご利用ユーザが対象となりますので、プラットフォーム系ライセンス(Force.com、Lightning Platformなど)をご利用のお客様についてはご参考程度にご覧いただければと思います。
* Sales Cloud Einstein の目指すもの - 「営業の生産性向上」
実際の機能の説明をする前に、まず「Sales Cloud Einstein とは何か」を確認しましょう。
いつものように公式ヘルプの文言を引用いたします。
Sales Cloud Einstein
https://help.salesforce.com/articleView?id=einstein_sales.htm&type=0
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重要な予測、インテリジェントなおすすめ、タイムリーな自動化により、営業プロセスのすべてのステップでチームの営業の生産性が大幅に向上します。
Sales Cloud Einstein は、チームの営業活動と CRM データをもとに学習するユーザ独自のデータサイエンス部門で、最良のリードの特定、効率的な商談の成立、容易な顧客維持に役立ちます。
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Sales Cloud Einstein とは「営業の生産性向上を支援する機能」 ということになります。
過去の取引開始済みリードや成立商談の傾向を分析し、より確度の高いリード、およびより優先度の高い商談を推奨することで、営業担当者はリードの選別や商談の状況確認に時間を費やすことから解放され、その分の時間を顧客対応に充てることができます。
併せて、Einstein は顧客とのメールのやりとりから、取引開始や商談成立の「気づき」となる瞬間を察知し、リードや商談にメール内容をコピーしたうえで、担当者にアラートを送信し、それにより担当者はメール履歴を掘り返すことなく、重要な商談に対して適切なアクションを迅速に取ることができるようになります。
では、具体的にどのような機能が提供されているかを見てみましょう。
- Einstein 活動キャプチャ
- Einstein 自動取引先責任者
- Sales Cloud Einstein スコアリング(リード・商談)
- Sales Cloud Einstein インサイト(取引先・商談)
- Einstein 売上予測
機能の概要については、シリーズの第一回で簡単に触れていますので、まずはそちらをご覧ください。
2020.05.14「Einstein AI で Salesforce は進化する:(1) Salesforce Einstein の概要と諸機能」
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000904006
Sales Cloud Einstein を使用するための手順は、大まかには以下の通りです。
- 権限セットを管理者およびユーザに割り当てます
- 管理者は設定メニューから各機能を有効化します
- 機能によっては初期設定が必要なので、管理画面から設定を行います
- 有効化および設定を行った各機能を、ユーザに割り当てます
- スコアおよびインサイトを参照できるよう、ページレイアウトに追加します
最初に、Sales Cloud Einstein を使用するユーザに権限セットを割り当てます。
Sales Cloud Einstein ライセンスがプロビジョニングされた組織には、自動的に権限セット「Sales Cloud Einstein」が作成されますので、「割り当ての管理」にて、管理者および Sales Cloud Einstein を使用するユーザに割り当てます。
Sales Cloud Einstein の各機能は、設定メニューの「支援付き設定」より有効化が可能です。
各機能ごとに独立した設定メニューもありますが、まず「支援付き設定」から参照する方がわかりやすいです。
各機能の設定は、リードスコアリングのようにウィザード形式で細かい設定を行うものもあれば、商談スコアリングのように「有効/無効」しかないもの、リードおよび商談のインサイトのように「有効/無効」に加えてページレイアウトやリストビューの設定へのリンクが表示されたものなど、機能によってさまざまです。
Sales Cloud Einstein の機能のいくつかは、メールとの連携を必要とします。
具体的には、Einstein 活動キャプチャ、およびそれを必要とする諸機能(Einstein自動取引先責任者、Einstein インサイト)です。
Einstein 活動キャプチャの設定画面トップです。
連携可能なメール&カレンダーサービス(Google G Suite、Microsoft Office 365 および Exchange)を選択します。
G Suite を選択した場合の例です。
カレンダーと行動、連絡先と取引先責任者は連携が自動で有効化されますが、メールについては連携をオフにすることも可能になっています。
設定が完了すると、機能を割り当てたユーザの画面トップに、設定を促すバーが表示されるようになります。
リンクをクリックすると「私の個人設定」に遷移し、連携メール&カレンダーサービス(今回の例では G Suite)のアカウントとパスワードを入力するよう求められます。
接続が完了すると「接続済みアカウント」に追加されます。
(サービスを使用しなくなった際に「切断」も可能です)
リードのメールアドレスから営業担当者に対して "商談の件で相談をさせてください" という内容でメールを送信したところ、リードの活動履歴にメールの件名が追加されました。(クリックすれば本文も参照できます)
まさしく「メールを活動にキャプチャした」というわけです。
先ほどご案内しました通り、いくつかの Einstein 機能は活動キャプチャの有効化を必要とします。
そのうちの一つ、「Einstein 自動取引先責任者」にて、 活動キャプチャで取り込まれたメールの内容と連携する形で、 以下の推奨が行われます。
- 既存取引先への取引先責任者の追加
- 進行中商談への「取引先責任者の役割」の追加
通常は「Einstein の提案」に表示されたものを手動で追加する形を取りますが、(ベータ版ですが)条件に合致したものを自動で追加するオプションもあります。
Einstein 自動取引先責任者
https://help.salesforce.com/articleView?id=einstein_sales_adc.htm&type=5
活動キャプチャと連携するもう一つの機能は「商談インサイト」です。
Einstein 商談インサイト
https://help.salesforce.com/articleView?id=einstein_sales_opportunity_insights.htm&type=5
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商談について関連する更新情報を取得し、さらに多くの案件成立に結び付けられるようにします。
商談インサイトには、成立の可能性が高い商談についての予測、フォローアップのアラーム、商談に関する重要な瞬間が発生したことを示す通知が含まれます。
インサイトごとにその表示理由の詳細が示され、関連する総計値にインサイトが結び付けられます。
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商談に「取引先責任者の役割(ロール)」として紐づけられた取引先責任者とのやりとりを、活動キャプチャで商談に関連付けし、その内容を分析して「Einstein インサイト」に表示します。
活動キャプチャによって商談に紐づけられたメールの内容を分析し、ネガティブな要素が確認されたり、アクションへのリプライが一定期間なかったり、担当者の退職や引継ぎがあったり、といった場合にアラートで注意喚起を行います。
画面の例では、テスト組織に商談のサンプルが少なく、かつメールが活動履歴にキャプチャされてから間もないため、「現在インサイトはありません」としか表示されていませんが、もしメール本文の「本商談について一旦見直しさせていただけますでしょうか」という文言が Einstein に適切に分析された場合、恐らくインサイトに「商談が期限内に成立しない可能性あり」と表示され、想定される理由に「顧客が見直しを希望している」と記載されるものと考えられます。
上の画面キャプチャのように、各営業担当者は商談の「Einstein インサイト」セクションで商談ごとのインサイトを参照しますが、マネージャはレポートやリストビューを使用してチームメンバーが担当する商談のインサイトを一括で参照することもできます。
Salesforce 公式のドキュメントに詳細の記載がありますので、こちらもご参考にしていただければと存じます。
ホワイトペーパー「Einstein 商談・取引先インサイト」
https://www.salesforce.com/content/dam/web/ja_jp/www/documents/datasheets/sales-cloud-einstein-opportunity-account-insights.pdf
* リードのスコアリング機能を試してみる - Trailhead のプロジェクトで作業用組織を取得しましょう
活動キャプチャとインサイトについて簡単に触れたところで、次は「スコアリング」機能について確認してみましょう。
他の Einstein 機能と同じく、Sales Cloud Einstein も「有償でのオプション」となっています。
(Einstein 予測ビルダーは例外的に「1モデル分のお試しライセンス」が付いていますが、Sales Cloud Einstein には提供がありません)
「お試しで使ってみないことには、導入していいかどうか判断が出来ない」とお思いの方も多いと思います。
その場合は、動作テスト用の Developer Edition 組織を取得して、Trailhead プロジェクトを行うことで、機能の評価ができるようになっています。
Einstein リードスコアリングによるリードの優先度設定
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/projects/prioritize-leads-with-einstein-lead-scoring
Sales Cloud Einstein に関心ございましたら、まずは上記の Trailhead プロジェクトを一通り実施していただければよろしいかと思われます。
プロジェクトの最初の単元が「Einstein リードスコアリングが付属する Trailhead Playground へのサインアップ」となっており、組織の取得方法がわかりやすく記載されています。
「まだ Trailhead のアカウントを取っていない」場合は、過去記事で詳しく解説していますので、是非こちらもご参照ください。
2020.04.28 「【テレワーク支援企画】 業務の合間に Trailhead でスキルアップしましょう」
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000746746
それでは、実際にリードのスコアリングを試してみましょう。
Trailhead プロジェクトを進める過程で Playground として取得した組織にログインすると、Sales Cloud Einstein の支援付き設定メニューにアクセスすることができます。
「Einstein リードスコアリング」の設定メニューを開きます。
リードの取引開始のマイルストンを選択します。
商談を使用していない場合を除いて「リードは商談、取引先責任者、取引先に変換されます。」を選択します。
スコアリングするリードを絞り込む場合は条件を選択します。
例えば、右の説明にもありますが「B2Bだけ、もしくはB2Cだけ」という場合、レコードタイプで区別して条件に設定します。
全件を対象にするのではなく、対象を絞った方がスコアリングの精度が向上するとのことです。
分析に使用するリード項目を絞りこむことでも、スコアリングの精度は向上します。
今回はカスタム項目を追加していないので「すべてのリード項目を使用します」を選択しました。
カスタム項目を多数追加している場合は、項目の考慮が必要な場合もあるかもしれません。
準備が完了しました。
それでは、新規でリードを追加して、スコアリングを確認してみましょう。
まずは以下条件の場合。
役職:VP(副社長)
年間売上:78万ドル
リードスコアは「98」となりました。
過去の取引開始リードと比べてもほぼ最上位の条件のようです。
次は少し条件を変えて。
役職: Marketing Manager (マーケティング担当)
年間売上: 12万ドル
リードスコアは「57」となりました。
「上位否定」セクションにこれらの要因が明記されています。
新規作成されたリードをリストビューに表示し、営業担当者は上位から順にアプローチを行えば、より効率よくリードの取引開始への動きを取ることができます。
プロセスビルダーの機能を併用して、「一定以上のスコアを獲得したリードを、担当者に自動で割り当てる」「スコアが一定のラインに達しなかったものをキューに移行する」といった運用を行えば、効率は更に向上します。
(先ほどご案内の Trailhead プロジェクトにもその方法のガイドがありますので、是非ご覧ください。)
今週は Sales Cloud Einstein の機能概要と、取引開始に向けて注力するリードの選別をスコアリング機能に任せるところまでお話ししました。
次週は、リードの取引を開始してから商談成立までの間 Einstein がどのように関わるかを、主に「売上予測」機能の観点からご案内させていただく予定です。
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Salesforce Einstein 機能についてのシリーズも、ついに終盤に差し掛かりました。
もちろん紹介のみに留めて「深掘り」していない機能も多々ありますが、スペースにも限りがありますので、重要度の高い機能に限らせていただいております、何卒ご容赦ください。
(先週の記事も、配信前のプレビューを行っている段階で「サイズ超過です、コンテンツ内容を減らしてください」というアラートが発生し、内容を削るのに結構大変でした!)
「待望の新機能」や「見落としがちな重要ポイント」などを皆様と共有したい、皆様に Salesforce を余すことなく活用していただきたいという一心で毎週記事を書いておりますので、「ここをもっと詳しく取り上げてほしい」「この機能についても記事を書いてほしい」というご要望ございましたら、遠慮なくサポートまでご連絡いただければ幸いでございます。
本シリーズは来週で一旦完結し、次は「Salesforce のセキュリティ強化機能とシングルサインオン」について取り上げる予定です。
それが完結したタイミングで、ちょうど Summer '20 のリリースとなりますので、恒例の「新機能を深掘り」させていただきます。
今後ともウフル カスタマーサポートを引き続きご愛顧いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
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