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2020.03.13 「Salesforce - Spring '20 新機能をチェック(4):Service Cloud 編(後編)」

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2020.03.19 「Salesforce - Spring '20 新機能をチェック(5 - 最終回):開発者向け機能、コミュニティ、Pardot 連携」

 

お世話になっております。
ウフル カスタマーサポート Salesforce 担当の 後藤 でございます。

 

Spring '20 がリリースされてからまもなく一ヶ月が経とうとしています。
皆様におきましても新機能や機能改善をすでに体験されているものかと存じますが、まだ紹介していない機能もございますので、あと2週ほどお付き合いいただければ幸いでございます。

今週は先週に引き続き「Service Cloud 編」の後編をお送りします。
(来週が「コミュニティ、開発者向け機能(主に Lightning フロー)、Pardot 編」で完結となる予定です)

 

Spring '20 のリリースノートはこちらになります、併せてご参照ください。
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/salesforce_release_notes.htm

 

バックナンバーは Web でもご覧いただけますので、未読の方は是非よろしくお願いいたします。

第1回 Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(前編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000234526

第2 回 Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(後編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000242403

第3回 Service Cloud 編(前編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000283623

 

 

 

* ナレッジの新機能

 

ケースと共に Service Cloud の中心を成すのが「ナレッジ」です。

ナレッジの重要性については、過去のシリーズ記事「 知ってるようで知らない Service Cloud」でも取り上げさせていただきました。

 

2020.01.31 「知ってるようで知らない Service Cloud:(3) ナレッジの仕組みを知り、Service Cloud の中でどのように機能するかを理解する」
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000213546

 

Spring '20 においても、ナレッジの機能が着実にブラッシュアップされています。

  • 記事バージョンの比較による変更内容の確認(ベータ)
  • チャットおよびメッセージングへの記事のリンク
  • 挿入した記事での項目の表示ラベルの表示/非表示
  • Google Chrome でのリッチテキストエリア内画像のサイズ変更
  • 添付ファイルのアクセス権設定、およびドラフトでの添付ファイルバージョン管理

 

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まずは「記事バージョンの比較」機能についてです。
(こちらは Spring '20 では「ベータ」扱いのため、今後正式リリースまでに仕様変更がされる、または予告なく提供が中断される可能性がある点にご注意ください。)

過去記事のナレッジの回でも取り上げました通り、オリジナル記事を変更して保存すると「新バージョン」として保存され、オリジナル版は「旧バージョン」として残ります。

ナレッジ担当者は、新バージョンを公開する前のレビューで必ず旧バージョンとの差分を比較する必要がありますが、今まではブラウザの別ウィンドウを2つ左右に並べて目視で比較していたものが、本機能によって「どこが変更されたのか」が単一画面で容易に確認できるようになりました。

使用例を以下にご紹介します。

 

<バージョン 4>

 

<バージョン 5>
「現在は新型コロナウィルスの影響で~」の文言が追加されています。

 

<比較画面:バージョン 4 を基準にバージョン 5 を表示した場合>

 

追加された「現在は新型コロナウィルスの影響で~」の部分が緑の下線付きで表示されています。

上の画面とは逆に「バージョン 5 を基準にバージョン 4 を比較対象として表示」した場合はこのようになります。

 

<比較画面:バージョン 5 を基準にバージョン 4 を表示した場合>

 

比較対象のバージョンには存在しない文言が赤の取り消し線付きで表示されています。
「新バージョンではどの部分が削除されたか」はこのようなイメージで確認できます。

制限事項もいくつかあります。
例えば、バージョン間で記事レコードタイプが異なる場合、比較はできません。

 

 

併せて、まだベータ版のためなのか、比較画面での「記事レコードタイプ」も、「FAQ」などの表示ラベルではなく、ID がそのまま表示されてしまっています。
恐らくこういった点も含めて「プロトタイプで機能を提供して、ユーザの意見で正式リリースに向けて機能を改善していく」という方針が取られていると考えられます。
実際、「記事バージョン比較に関するフィードバックや提案は Trailblazer Community の Knowledge グループに投稿してください」とリリースノートにも明記があります。

 

「記事バージョンの比較」セクションは自動ではページレイアウトに追加されません。
Lightning ページビルダーの編集画面にて「比較」タブを追加し、コンポーネントを配置する方法が推奨されています。

 

 

メイン画面のタブ一覧にカスタムタブ「比較」を追加し、コンポーネント一覧から「記事バージョンの比較」をドラッグドロップします。

 

記事バージョンの比較による変更内容の確認 (ベータ)
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_compare_versions.htm

 

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続いて、 「チャットおよびメッセージングでの記事へのリンクの使用」 です。

Spring '20 より、チャットとメッセージングを介した顧客への回答に対し、記事の URL を共有できるようになりました。
予め以下のヘルプに記載の手順にて、ナレッジコンポーネントをチャネルで有効にしておく必要があります。

 

チャネルとケースパブリッシャーで記事 URL を共有するアクションの設定
https://help.salesforce.com/articleView?id=knowledge_public_url.htm&type=5

 

コンソールのオムニチャネルで Live Agent チャットを有効にし、カスタマーユーザからのチャットでの問合せを受けた際の画面イメージです。
チャット画面の右下にナレッジコンポーネントが表示され、該当するナレッジのメニューに「URL を会話に挿入」「記事を会話に挿入」が表示されているのが確認できます。

 

 

回答と URL を挿入してみました。

 

 

カスタマー側から見るとこのようになります。

 

 

カスタマーがリンク先にアクセスした際の画面です。
例えばナレッジ記事に添付ファイルや画像がある場合、回答文だけで済ませずにリンク先に誘導するのは非常に有効です。

 

 

カスタマーやパートナーが記事を参照できるかは、ナレッジの「公開先」でコントロールします。

 

「内部アプリケーションに公開」はオンで固定です。
パートナーユーザとカスタマーユーザ(顧客)ではチェックが区別されています。
「知識ベースに公開」をオンにすると、ゲストユーザ(ログイン無し)にも公開されます。

 

チャットおよびメッセージングでの記事へのリンクにより知識を広める
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_link_chat.htm?edition=&impact=

 

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その他の「軽微な修正および機能追加」についてまとめてご案内します。

挿入した記事での項目の表示ラベルの表示/非表示」は、記事を回答に挿入した際に項目の表示ラベルを表示するかしないかをユーザが選択できるというものです。

従来は「メールには必ず項目名が表示され、ソーシャルやチャットなどメール以外では必ず非表示になる」仕様でした。
Spring '20 で全チャネルでデフォルトで表示となり、同時に表示/非表示の制御ができるようになりました。
ナレッジ設定の「コミュニケーションチャネルの対応付け」メニューにて「Lightning Experience 設定」の「項目表示ラベルを除外」をオンにします。(デフォルトはオフです)

 

 

「項目表示ラベルを除外」がオフのままで、回答メールに記事を挿入した場合です。

 

 

「項目表示ラベルを除外」チェックをオンにした場合です。
項目名「回答」が除外されています。

 

 

ソーシャルやチャットなどのチャネルの有無、およびメールテンプレートの設定と合わせて、表示/非表示を制御するとよろしいと思われます。

 

挿入した記事での項目の表示ラベルの表示または非表示、および関連ファイルのスキップ
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_show_labels.htm

 

「Google Chrome でのリッチテキストエリア内画像のサイズ変更」機能が追加されました。

ナレッジ記事の編集画面にて、リッチテキストエリアに挿入した画像のサイズを、挿入後にドラッグ操作で自由に行えるようになりました。

 

 

ナレッジに限らず、リッチテキストエリア全体が対象なので、実はケースのメール作成画面で HTML テンプレートを使用する際にも画像サイズ変更が可能になっています。

 

Google Chrome でのリッチテキスト項目内の画像のサイズ変更
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_resize_images.htm

 

「添付ファイルのアクセス権設定、およびドラフトでの添付ファイルバージョン管理」 については、今まではナレッジの添付ファイルは「ナレッジの所有者」のみが制御可能で、翻訳者や編集者は添付済みのファイルを削除できませんでしたが、Spring '20 より 翻訳またはドラフトの編集権限を持つユーザがオリジナル版や旧バージョンに添付のファイルを削除し、添付ファイルを常に最新の状態に保つことが可能になりました。

以下のメニューで設定を行います。

 

機能設定 > Salesforce Files > 一般設定

 

「レコードに添付されたファイルのファイルアクセス権を [レコードごとに設定] に設定

 

 

ドラフトおよびドラフト翻訳の添付ファイルの制御
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_draft_attachments.htm

記事に添付するファイルのデフォルトのアクセス権の設定
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_knowledge_default_access.htm

 

 

 

* Einstein ボットの機能強化

 

Spring '20 での Service Cloud における「目玉」と位置付けられているのが、Einstein スマートボットの機能強化です。

リリースノートにも「スマートボットの機能強化による春の準備」とか「ボットの花を咲かせる準備はできていますか」といった、若干テンションが高めの文言が並んでいます。

 

Einstein ボット: スマートボットの機能強化による春の準備
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_einstein_bots.htm

 

Einstein ボットとは、Service Cloud のチャネルのひとつである「Web チャット」を構成する要素の一つです。

 

2020.02.07 「知ってるようで知らない Service Cloud:(4)顧客がケースを登録するチャネルにどのようなものがあるか確認する」
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000204343

 

実運用については今後 Einstein AI シリーズ企画でまとめて取り上げますので、本項では Spring '20 でどのように変わったかをご案内いたします。

  • 条件付きメッセージングを使用したチャットボット環境のカスタマイズ
  • 会話の修正を使用したエラーの適切な処理
  • チャットボット入力インジケータを使用した顧客エンゲージメントの改善

 

まずは「条件付きメッセージング」についてです。

リリースノートには以下のように記載があります。

 

============================================
ボットで組み込みのロジックを使用して顧客にパーソナライズされた環境を提供し、事前チャットフォーム、CRM 内のデータ、またはボットへの以前の返信のいずれかによる会話コンテキストに基づいて、カスタマイズされたメッセージを送信します。
============================================

 

条件付きメッセージングを使用したカスタマイズされたチャットボット環境の作成
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_einstein_bots_conditional_messaging.htm

 

Winter '20 以前の Einstein ボットビルダーでは、ダイアログ内の「ルール」において、「ルールアクション」で「メッセージを送信」を選べなかったため、別のダイアログに「メッセージ」を設定しておいて、ルールに合致した場合そのダイアログを呼び出す方法を取る必要がありました。

Spring '20 でルールアクションに「メッセージを送信」が追加されたことで、例えば「メールアドレスが未設定の顧客からの問合せに対して「メールアドレスを入力してください」とメッセージを送信する流れを、今までは別に設定した「メールアドレスの入力」ダイアログをコールする必要があったのが、単一のダイアログでカバーできるようになりました。

 

 

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続いては「会話の修正を使用したエラーの処理」です。

ボットとのやりとりで、上にも述べたように「メールアドレスを入力してください」など入力を促すことも多いはずです。

入力された文字列は、ボット設定上の変数(この場合は「Email (Text)」)に保存され、次のプロセスに進み、入力された値が形式と一致しなかった場合、Winter '20 までは変数に保存されずにそのまま先に進んでいってしまいましたが、Spring '20 において、修正を促すメッセージを表示できるようになりました。

 

 

修正試行で表示するメッセージは2パターンまで指定可能です。
2回間違った場合のボットのアクションについては、「正しく入力されるまで繰り返す」と「次のステップに進む」を選べます。
もちろん「次に進む」を選んだ場合は変数が保存されない可能性が高いため、デフォルトは「繰り返す」になっており、その場合は「試行1 ⇒ 試行2 ⇒ 試行1 ⇒ 試行2・・・」と、正しく入力されるまでメッセージが繰り返されます。
対象項目がメールアドレスのような必須項目ではなく、スルーしても後々の対応への影響が少ない場合は「次に進む」を選んで「再試行を2回で打ち止めとする」のが良いでしょう。

 

会話の修正を使用したエラーの処理

 

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最後に「チャットボット入力インジケータ」についてです。

エージェントと直接やりとりを行う Web チャットの場合、相手が入力中の場合はこのように「入力中です」と表示が出ます。

 

 

これにより、顧客は「放置されていない、ちゃんと対応を受けている」という安心感を得られます。

チャットボットの場合、相手は人間のエージェントではなくコンピュータプログラムですが、顧客から見れば相手が人間なのかプログラムなのかは関係なく、「その先に人がいる」対応を求めるのが普通だと思われます。
「メールアドレスを入力してください」など、ボットが顧客の入力を待機している間、「・・・」といういわゆる「3ドットマーク」が揺れて表示され、「入力を待ってますよ」「処理していますよ」というアピールを顧客に対して行います。
これにより、ボットチャットにおいても、エージェントとのやりとり同様の「血が通っている感覚」を顧客に抱かせることができます。

 

チャットボット入力インジケータを使用した顧客エンゲージメントの改善
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_einstein_bots_typing_indicator.htm

 

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Einstein ボットの設定と動作のイメージにつきましては、翌々週以降に予定しておりますシリーズ企画 「Einstein AI で Salesforce はどう変わる?」(仮題) にて取り上げますので、その際に Spring '20 の新機能詳細についても改めてご案内させていただきます。

 

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Spring '20 の新機能紹介の4回目、いかがでしたでしょうか。

図らずしも Service Cloud の「奥の深さ」と Einstein AI の「現在進行中の発展性」を垣間見れた回となりました。
製品サポート担当である私自身まだまだ把握できていない機能が少なからずありますので、4ヶ月に一度のメジャーアップデートは、把握できていない部分を認識し理解を深める良い機会なのだなと強く感じました。

いよいよ次回は Spring '20 新機能紹介の最終回、「コミュニティ構築機能」「ノンコーディング開発機能(主に Lightning フロー)」「Sales Cloud と Pardot の連携機能」について取り上げて完結とさせていただく予定です。

 

今後ともウフル カスタマーサポートを引き続きご愛顧いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


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