2020.03.06 「Salesforce - Spring '20 新機能をチェック(3):Service Cloud 編(前編)」
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お世話になっております。
ウフル カスタマーサポート Salesforce 担当の 後藤 でございます。
お使いの Salesforce にて、先月の第3週に Spring '20 にバージョンアップが行われ、カスタマーサポート通信でも恒例行事として「新機能をチェック」 シリーズをお送りしております。
今週は第3回目、「Service Cloud 編」の前編をお送りします。
Spring '20 のリリースノートをお手元にご用意いただいた上で、ご覧いただければ幸いでございます。
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/salesforce_release_notes.htm
バックナンバーは Web でもご覧いただけますので、未読の方は是非よろしくお願いいたします。
第1回 Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(前編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000234526
第2回 Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(後編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000242403
* ケースオブジェクトの新機能
「商談」が Sales Cloud の中核を成すように、Service Cloud の中心となるオブジェクトは「ケース」になります。
従って、4ヶ月ごとのメジャーバージョンアップにおいても、ケースにどのような機能が追加されたかが、Service Cloud の利便性向上におけるもっとも重要な関心事だと言えます。
- ケースマージ機能の正式リリース
- 「状況」リストに「クローズ」を表示しない選択が可能に
- リストビューからのプレビューの直接編集
- ケースフィードのタイムスタンプを絶対表示/相対表示で切り替え可能
- その他利便性向上のための修正
まずは、「ケースマージ」についてです。
取引先や取引先責任者ではお馴染みの「マージ」機能が、ついにケースにも実装されました。
顧客サポートを行う上で、「同じ内容の問合せが別のチケットでリクエストされたので、二つのケースをひとつに統合したい」ということ、よくあると思われます。
今までは「消す方のケースのコメントをコピーして、残す方に貼り付けたうえで、重複ケースを削除する」という方法を取るしかなかったのが、マージ機能が実装されたことで、「簡単な操作で複数ケースを確実に統合できるようになった」「主ケース以外のマージされるケースレコードについても、設定で残すか消すかを選択できるようになった」という利点を享受できるようになりました。
ケースマージはデフォルトで有効化されていません。
設定メニューから有効化する必要があります。
機能設定 > サービス > ケースマージ
有効チェックの他に、マージ済みレコードをどのように扱うかの設定をこちらの画面で行います。
推奨する設定は「重複ケースは保持する」です。その場合重複ケースは状況が「クローズ」となりますが、「ケース状況を追加」にて、独自の状況値(デフォルト値は「マージ済み」)を追加して従来のクローズ状況値と区別することで、「リストビューにて重複ケースだけ非表示にする」ことが可能になるので、独自の状況値を追加しておいた方が後々で役に立つと思われます。
※ 上記画面ショットの例では、設定上は「Closed」「Merged」になっており、 トランスレーションワークベンチ の翻訳機能でユーザ画面に日本語表示しています。
もちろん「マージ後に重複するケースを削除」も選べますが、そちらを選ぶ際は、くれぐれも運用は慎重に・・・。
設定が終わったので、実際の動きを見てみましょう。
マージを実行できる場所は、下記のいずれかになります。
- ケースリストビュー
- 特定のケースレコード
ケースリストビューを開くと、「ケースをマージ」 ボタンが追加されているのがご覧いただけるはずです。
マージしたいレコードを2つ、もしくは3つ選択して「ケースをマージ」をクリックします。
マージするケースレコードは、異なる取引先や取引先責任者に関連づいていても構いません。(取引先責任者のマージが「同じ取引先に属するものに限定して可能」なのに対し、ケースのマージでは自由度を持たせてあります。)
マージ実行画面自体は、取引先や取引先責任者のものと変わりません。
「マスタとして使用」するレコードを選択し、異なる値の項目でマスタレコード以外のものを使用する場合は手動選択します。
マージが完了すると、重複レコードは「マージ済み」 として残ります。(削除するよう設定した場合を除く)
「取引開始済みのリード」 のように自動で非表示にはならないので、一覧に表示したくない場合は、リストビューの検索条件で除外しましょう。
一方、個別レコードからマージを実行する動線は以下の通りです。
画面右上のアクション一覧から「ケースをマージ」 をクリックします。
元レコードが選択された状態でマージ画面が開くので、重複レコードを選んで左のチェックをオンにします。
なお、4つ以上ケースレコードを選択した場合のエラーメッセージは、「ケースを2、3個追加して、もう一度お試しください」です。
「既に4つ選んでるのに更に追加してください」 とは少々不思議ですが、これは恐らく「レコードを選択しなかった、または1つしか選択しなかった場合」 を想定したメッセージだと思われます。
ケースマージを使用した重複するケースの結合 (正式リリース)
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_cases_case_ merge_ga.htm
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「状況」選択リスト値に「クローズ」 を表示しないオプションが追加されました。
ケースのステータスには「新規」「対応中」「エスカレーション中」「顧客返信待ち」などがあり、状況によって臨機応変に変更されますが、「クローズ」 だけは扱いが特別で、原則的には「 クローズしたらそのケースは終了、他のステータスに変更されることはない」 という位置づけになります。
そのため、状況でクローズを選ぶ場合は、他の状況値への変更とは動線を区別しておきたいというニーズも多いと思われます。
従来のケース管理でも、画面上に「クローズ」ボタンを表示し、これを押すことで明示的にクローズとするオプションがありました が、状況リスト値にも「クローズ」があることで、 ユーザはどちらを選択すべきか若干混乱することになっていました 。
状況リスト値から「クローズ」 を非表示にするオプションが加わったことで、管理者は3つのオプションから選べるようになりました。
- 画面上に「クローズ」ボタンを表示し、状況リスト値にも「クローズ」を表示する
- 画面上に「クローズ」ボタンは表示せず、ユーザは状況リスト値の「クローズ」 を選択してケースをクローズする
- 画面上に「クローズ」ボタンを表示し、状況リスト値に「クローズ」を表示しないことにより、ユーザは「クローズ」 ボタンを押してケースをクローズする(← New)
設定は以下のメニューから行います。
機能設定 > サービス > サポート設定
サポート設定の当該オプション部分はこちらです。
「クローズケースの状況項目を表示」をオフにすると、一段下の「[保存 & クローズ] ボタンおよび [完了] リンクを非表示」チェックも連動してオフになります。( ボタンが非表示のままではケースのクローズができないため)
「クローズケースの状況項目を表示」オンとオフの「状況」 リスト値の違いです。
<チェックオン>
<チェックオフ>
クローズケースの状況項目を表示するか非表示にするかを選択
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/ release-notes/rn_cases_closed_status.htm?edition=&impact=
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リストビューからのプレビューの直接編集が可能になりました。
今まではリストビュー上のフロート表示は参照のみで編集は不可で した。
編集するためには対象レコードのリンクを開く必要がありましたが 、Spring '20 からフロート上に「編集」「削除」ボタンが追加され、わざわざ対象レコードを開く必要がなくなりました。
重要なポイントが「編集画面がリストビュー上にフロートで表示される」点です。
保存後にまたリストビューに戻るので、今までのようにリストビューを開きなおす必要がなくなり、複数レ コードを一つずつ確認しながら修正する作業において効率化が大幅 に向上しました。
なお、フロート表示の項目は「コンパクトレイアウト」 でカスタマイズ可能です。
(上位4つが表示に反映されます。)
Lightning Experience でケースのフロート表示を使用してリストビューからケースの詳細 を表示および編集
http://releasenotes.docs. salesforce.com/ja-jp/spring20/ release-notes/rn_cases_hover. htm?edition=&impact=
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ケースフィードのタイムスタンプを絶対表示/ 相対表示で切り替え可能になった件は、前回の「Lightning プラットフォーム編」で「Chatter の機能改善」の項でご案内しておりますので、バックナンバーをご参照ください。
第2回 Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(後編)
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ ja/articles/900000242403
ケースフィードのタイムスタンプの表示方法のカスタマイズ
http://releasenotes.docs. salesforce.com/ja-jp/spring20/ release-notes/rn_cases_ timestamps.htm
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その他の「小さな機能改善」についてまとめてご案内いたします。
エスカレーション済みケースの左側にマーカーが付くようになりま した。
「エスカレーション済みフラグ」 チェックがオンのレコードについて、件名の左側に赤い▲が付いて、明示的に確認できるようになりました。
<リストビューでのエスカレーション済みケース表示>
<個別レコードでのエスカレーション済みケース表示>
ケースのエスカレーションマーカーを使用した時間の節約
http://releasenotes.docs. salesforce.com/ja-jp/spring20/ release-notes/rn_cases_ escalation_icon.htm?edition=& impact=
ケースを誰が Chatter 上でフォローしているか関連リストで確認できるようになりました 。
ケースに関わるユーザに適切に通知されるよう、ケース所有者がリストを参照して、もしフォローしていない人がいる場合は、フォローするようメンションで促します。
Lightning Experience でのケースレコードホームページからのフォロワーの表示
http://releasenotes.docs. salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_cases_followers.htm?edition=&impact=
* エージェントの生産性を向上するマクロの機能改善
効率性が最優先で求められるカスタマーサポートの現場において、「繰り返しの作業を如何に定型化するか」 は常に最重要課題の一つです。
Service Cloud においても「マクロ」機能によって「ルーティーンのパッケージ化」が提供されています。
マクロ機能については、カスタマーサポート通信でも「知ってるようで知らない Service Cloud」シリーズで取り上げております、よろしければバックナンバーをご参照ください。
2020.02.14 「知ってるようで知らない Service Cloud:(5 - 最終回)その他の Service 機能、および Service Cloud の先にあるもの」
https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000204563
Spring '20 では、マクロに対して重要な機能追加が二つ提供されています。
- 一括マクロを使用した繰り返しタスクの自動化
- バックグラウンドでのマクロの高速実行
まずは「一括マクロを使用した繰り返しタスクの自動化」 についてです。
例えば、インターネットサービスのサポートを提供していて、サーバーダウンなどでシステムが停止した場合、多くのお客様から同一内容での問合せを受けることになります。
このような場合、一件ずつメール回答していったら、たとえマクロを使用したとしても、件数分ボタンを押すことになり、何十件、何百件、場合によって何千件も手動で対応したとすると、 それだけで疲労困憊してしまいます。
こんな状況で、リストビューから対象のケースを複数選択してマクロを実行できれ ば、どんなに楽なことでしょう。
それが Spring '20 にて「一括マクロ」として機能追加されました。
サービスコンソール上のリストビューで対象ケースを選択し、画面下部のウィジェットバーからマクロブラウザを呼び出します。
リストビューからマクロブラウザを呼び出した場合、一括マクロとして使用可能なマクロのみが一覧に表示されます。
上記画面の例では、エスカレーション済みの製品不具合ケースに対して、一括で公式謝罪対応を実行します。
一括マクロとして使用できるマクロには条件があり、条件を満たさないマクロは、先述の通り、リストビューのマクロブラウザには表示されません。
例えば、公式ヘルプを参照すると「1つ以上の送信アクション命令が必要」と記載があります。
一括マクロ
https://help.salesforce.com/ articleView?id=macros_def_ bulk_macros.htm&type=5
他にも制限事項がありますので、詳しくは上記ヘルプをご参照ください。
Lightning Experience での一括マクロを使用した繰り返しタスクの自動化
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複数のケースに一括でマクロを実行した場合、完了までに時間を要することがあり、今までの単独レコードへのマクロ実行では考慮する必要があまりな かった「処理待ちの画面をどうするか」 という課題が生じてきます。
Spring '20 では、一括マクロの追加と併せて、「バックグラウンドでのマクロの高速実行」が実装されています。
例えば、先ほどのように、数百件のケースに対して同じ内容のメールを送信するマクロを実行 中、完了するまでの数十秒から数分間、画面を遷移できないとなると、 その間に本来行えるはずだった作業ができないという問題が生じます。
そのようなマクロをバックグラウンドで実行することにより、作業が完了するまでの間、ユーザは別の作業を行うことが可能になります。
マクロの実行中、項目更新などのレコードへの変化は画面上に反映されず、完了したタイミングでポップアップ表示にてユーザに通知されます 。
バックグラウンドでの実行に対応するマクロは、マクロブラウザにて「稲妻マーク」で区別されています。
稲妻マークがついていないマクロは、従来通り実行状況がリアルタイムで画面表示され、ユーザはその間待機する必要があります。
バックグラウンドで実行可能なマクロとして使用できるものには恐らく条件があるはずです、確認の上、本シリーズ完結までにご案内できればと存じます。
レコードのホームページでのマクロの高速実行
http://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_macros_run_in_background.htm
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Spring '20 の新機能紹介の3回目、いかがでしたでしょうか。
Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編と同様に、Service Cloud においても、従来機能のブラッシュアップや Winter '20 でベータリリースされた機能の正式公開といった「利便性を向上する丁寧な機能改善」が中心となっているようです。
Service Cloud においては、Sales Cloud 以上に「エンドユーザ目線での改善」が結構目立っていますので、もしカスタマーサポートを運営しているお客様会社の方で、 Service Cloud 未導入の方は、これを機に一度ご検討いただければ幸いでございます。
次回は Service Cloud 編の後編、「ナレッジ」と「Einstein Bot」の新機能についてお送りし、次々回は完結編として「コミュニティ & Pardot 編」と「フォローしきれなかった追加更新」 についてお送りする予定でございます。
今後ともウフル カスタマーサポートを引き続きご愛顧いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
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