2020.02.27 「Salesforce - Spring '20 新機能をチェック(2):Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編(後編)」
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お世話になっております。
ウフル カスタマーサポート Salesforce 担当の 後藤 でございます。
お使いの Salesforce にて、先週 Spring '20 にバージョンアップが行われ、カスタマーサポート通信でも恒例行事として「新機能をチェック」 シリーズをお送りしております。
今週は第二回目、先週に引き続き「Sales Cloud & Lightning プラットフォーム編」の後編をお送りします。
Spring '20 のリリースノートをお手元にご用意いただいた上で、ご覧いただければ幸いでございます。https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/salesforce_release_notes.htm
先週の記事は Web でもご覧いただけますので、未読の方は是非よろしくお願いいたします。 https://csminfo.uhuru.jp/hc/ja/articles/900000234526
* レポート&ダッシュボードの新機能
大規模バージョンアップにおいて、レポートとダッシュボードの新機能はいつも注目されますが、今回もまた「痒いところに手が届く」 堅実な更新が提供されています。
- プレビューの自動更新をオフにするオプションの提供
- 項目間の検索条件を使用した項目の比較による絞り込み
- レポート結果にて「ユニーク数」を標準で使用可能に
まずは「プレビューの自動更新をオフにするオプション」です。
今までのレポートでは、編集画面にて絞り込み条件やグルーピングを設定すると、その度にプレビューの更新が発生し、更新が完了するまで数秒から十数秒の待機時間が発生していました 。
Spring '20 では、条件値を一つ変更する度に発生する自動更新をオフにするオプションが提供され、それにより編集がより迅速に行えるようになりました。
「自動的にプレビューを更新」をオフにした状態で、期間条件を変更すると・・・
「最新の編集内容を表示するには、プレビューを更新してください」と表示され、プレビューエリアがグレーになります。
「更新」 リンクをクリックすると変更後の条件でプレビュー表示されます。
「グレーの画面が表示されるのが気になる」 方はプレビューの自動更新を有効にして、「 複数の条件を変更してからプレビューを見たい」 方は無効にするとよろしいと思われます。
レポートプレビューの自動更新をオフにしてレポートの編集を迅速化 (正式リリース)
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_rd_reports_preview_off.htm
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「項目の比較によるレポートの絞り込み」は、日付項目や金額項目といった「数値を伴う項目」を比較して、条件に合致するレコードのみに絞り込む機能になります。
以前から Salesforce コミュニティの IdeaExchange に追加リクエストとして寄せられていた機能の「待望の実装」 となります。
Report Filters Should Be Able To Compare Fields To Each Other
https://success.salesforce. com/ideaView?id= 08730000000BrHAAA0
このように、要望をあげることで機能実装に至るケースは少なからずありますの で、皆様も「この機能が欲しい!」というご要望ございましたら、是非投稿していただければよろしいかと存じます。
IdeaExchange の概要とステータスについて
https://help.salesforce.com/ articleView?id=000333882& language=ja&type=1&mode=1
さて、「項目の比較によるレポートの絞り込み」 の設定方法ですが、
- Lightning レポートビルダー画面左側の「検索条件」タブを開き
- 「検索条件を追加」ルックアップにて、日付、通貨、数値のいずれかの項目を選択して
- 種別を「値」から「項目」に変更し、比較に使用する別の項目を選択する
方法を取ります。
画面キャプチャは「 商談の金額が期待収益を下回るものを絞り込む」設定例です。
比較対象とする項目は、元項目とデータ型が同じものに限定されます。
「金額」の場合は、「期待収益」や「年間売上」 など通貨型のみです。
数値化できない項目、例えばテキスト項目は選べないため、「二つのテキスト項目で同じ文字列のもの」 を絞り込むことはできません。あくまでも「多い少ない、高い低い」の比較に限定される点にご注意ください。
とはいえ、今まで「二つの項目の差分を返す数式項目を作って、その値がマイナスのものだけレポートで抽出する」 という手間を掛けていたのが、数式項目を作らずにレポートだけで絞り込めるようになったのは、 大きな機能改善だと思われます。
項目間の検索条件を使用した項目の比較によるレポートの絞り込み (正式リリース)
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_rd_reports_ filter_field_to_field.htm
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「レポート結果での値のユニーク数」ですが、こちらも「 今までは数式を作って対処していたものが、レポート自体で設定を持つようになったため、数式が不要になった」系の新機能になります。
例えば「取引先責任者の役割が関係する商談」のレポートでは、複数の取引先責任者が複数の商談に関係してくるため、レポート上で商談のレコード数をカウントすると、 重複が一切ない場合でもない限り、必ず「レポート上の商談数 > 実際の商談数」となります。
このような場合、レポートで実際の商談数、いわゆる「ユニーク商談数」をカウントするには、商談オブジェクトに「" 1" を返す数式項目」を予め作っておき、 その項目数合計を集計する手順が必要でした。
この方法は、Salesforce エンジニアの間では "Power of One" と呼ばれているもので、公式ヘルプや Trailhead でも「推奨される解決策」として記載があります。
サマリーレポートまたはマトリックスレポートの総計が正しくない ように見える
https://help.salesforce.com/ articleView?id=000313071&language=ja
レポートで親オブジェクトのレコード件数を取得し、重複する子レコードの件数を削除する方法
https://help.salesforce.com/articleView?id=000325842&language=ja
Trailhead - 数式項目の使用
https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/point_click_business_logic/formula_fields
言うまでもなく、項目追加ということは、システム管理者が設定をする必要があるわけですが、 今回のレポートのユニークカウント機能追加は、管理者権限を持たない一般ユーザにも、標準機能として "Power of One" を解放した、と言えます。
レポート編集画面にて、ユニーク数を集計したい項目のメニューから「 ユニークカウントを表示」を選択します。
(既に選択済みの場合は「ユニークカウントを非表示」 と表示されます。)
レポートを実行すると、ヘッダー部分と一番下の集計ゾーンの2箇所に表示されます。
画面は例として「商品が関連する商談レポート」で、商談に関連している(=現在使用されている) 商品の実際の件数を表示しています。
「当社では数多の商材を扱っているが、実際に流通されている商材はどれくらいあるのだろう」 という時に、この機能が有効活用できます。
レポート結果での値のユニーク数 (正式リリース)
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_rd_reports_ unique_count.htm
* 活動および Chatter の新機能追加
活動(ToDo と 行動)および Chatter にも新機能が追加されています。
- メールのスレッド表示
- カレンダーからプレビュー表示が可能に
- ケースフィード項目で日時スタンプを絶対表示/ 相対表示で切り替え
- ToDo をキューに割り当て可能に
活動タイムラインでのメール表示については、今までは時系列で一覧表示されていたものが、関連するメール( 元メールへの返信など)についてはグループ化され、 担当者は一連の会話を容易に確認できるようになりました。
件名左側の [>] をクリックすることで、当該メールへの返信が時系列で参照できます。
メールスレッドでのすべての会話の確認
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_sales_ productivity_email_activity_ timeline_threading.htm
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カレンダー上での行動予定の詳細プレビュー表示も追加されました 。
G Suite などでは既にお馴染みの機能で、Salesforce でも Classic には同様の機能が存在していましたが、ようやく Lightning Experience でも使用できるようになり、画面表示も Classic 版よりスマートになりました。
プレビュー上に「編集」「削除」ボタンがあるため、わざわざ詳細を開く必要がなくなりました。
これまで以上にすばやく行動の詳細を表示
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_sales_ productivity_calendar_preview_ on_hover.htm
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ケースフィードにおいて、タイムスタンプのデフォルト表示が「相対表示」に変更されました。
相対表示とは「たった今」「10分前」「5日前」「2週間前」 といったものです。
もちろん以前のデフォルト「絶対表示」に戻すこともできます。 管理メニューの「Chatter 設定」で「相対的なタイムスタンプを表示」 チェックをオフにすると絶対表示に戻ります。
(組織全体の設定となり、ユーザごとに使い分けることはできませんのでご注意ください)
相対表示が有効になるのはケースフィードのみです。
ケース以外のオブジェクト、例えばリードや商談では絶対表示のみとなりますので、こちらもご注意ください。
ケースフィード項目の日時スタンプの形式の設定
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_chatter_case_ dateandtime.htm
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今まで活動の任命先は個人のみでしたが、今回のリリースで ToDo がキューの対象になりました。
キューの設定で「サポートされるオブジェクト」に ToDo を追加すると、ToDo の任命先選択にて、キューを選べるようになります。
今までも任命先にグループ(公開グループおよびロール) を選ぶことはできましたが、グループを選んだ場合は「 グループメンバーの人数分だけ個別の ToDo が作成され、任命先はグループメンバー各個人となる」のに対し、キューを選んだ場合は「単一の ToDo が、キューを任命先として作成される」という違いがあります。
1つの ToDo をキューメンバーが共有するということは、キューメンバーのうち誰かひとりが ToDo を編集するだけで、プロジェクトの進捗を ToDo に反映できるという利点があります。
ToDo をキューに割り当てて作業を効率的に共有
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_sales_ productivity_activities_task_ queues.htm
* 生産性を向上する標準機能の改善
他にも、ちょっとした便利な機能追加がありますので、いくつかピックアップします。
- 「関連情報と共にコピー」ボタン
- 新規作成時に URL パラメータで値を差し込むカスタムボタンの Lightning 対応
- Lightning ごみ箱のレポート&ダッシュボードへの対応
- 取引先が関連するリストビュー&検索の改善
「関連情報と共にコピー」ボタンが標準で追加されました。
例えば商談で「次年度契約のため、商談商品もそのまま含めてコピーする」ということが、今までは Lightning フローや Apex トリガを開発してカスタムボタンに割り当てる必要があったのが、 ページレイアウトにボタンを配置するだけで、簡単に実現できるようになりました。
「関連情報と共にコピー」ボタンを押すと、当該レコードに関連付けられているオブジェクト一覧が表示されます。
今回の例では商談商品のみが紐づいていますが、取引先責任者の役割が紐づいていれば一覧に表示されるようになり 、 商談商品にスケジュールが含まれている場合、スケジュール反映の有無についても選択可能になります。
( 以下リンク先リリースノート詳細の画面ショットをご参照ください )
なお、「複数の商談商品を取捨選択してコピーする」 ことはできません。「全てコピーするかしないか」 になる点にご注意ください。
併せて、元々コピーボタンの無い取引先には対応していません。 こちらもご注意ください。
オブジェクトを関連レコードと共にコピー
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_general_ clone_with_related.htm
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Classic に於いて「常套手段」として活用されていた「URL パラメータでデフォルト値を差し込むカスタムボタン」、こちらがようやく Lightning でも使用できるようになりました。
リリースノートでサンプル数式が公開されています。
デフォルト項目値を含むレコードの作成ページへの移動
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_general_lex_ navigate_to_record_dfv.htm
<サンプル数式>
こちらは、取引先の新規作成時に元の取引先の値を引き継ぐ、つまり「取引先のコピー」ボタンで用いる数式になります。
一行目の "Account" のところは当該オブジェクト名で書き換えます。(カスタムオブジェクトの場合は "__c" まで含めます。)
二行目の "Name" については、2バイト文字を含む テキスト項目を差し込む際には、文字列を UTF-8 に変換するため URLENCODE 関数で囲む必要があります。
三行目の "OwnerId" には2バイト文字が含まれないので URLENCODE 関数で囲む必要はありません。
関連ヘルプ
Salesforce へのリクエストURIエンコーディングについて(変更適用日: 2018年2月11日)
https://help.salesforce.com/ articleView?id=000313575& language=ja&type=1&mode=1
実際に設定してみた例です。サンプルコードに忠実に、「 取引先のコピー」ボタンを作ってみました。
<カスタムボタン「取引先のコピー」設定>
<取引先ページレイアウトに「取引先のコピー」ボタンを追加>
<「取引先のコピー」ボタンから表示された新規作成画面>
「取引先 所有者」「取引先名」「取引先番号」に値が引き継がれ、「 従業員数」に固定値(35000)が入り、「要注意顧客」 チェックボックス(CustomCheckbox__c)が True になっているのがわかります。
なお、URL からお分かりいただけます通り、この方法で作成されたカスタムボタンは Lightning 専用です。Classic からボタンを押した場合、別ウィンドウで Lightning 画面が開きます。
Classic と Lightning のユーザが混在している環境でお使いのお客様はご注意ください。
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Lightning のごみ箱が、レポート&ダッシュボードに対応しました。
Winter '20 新機能紹介で「この場合だけはお手数ですが Classic に切り替えてください」とご案内いたしましたが ( https://csminfo.uhuru.jp/hc/ ja/articles/900000088226 ) 、直後のリリースで早速対応してきました。
ごみ箱内のレポートとダッシュボードへのアクセス
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_lex_recycle_ bin_reports_dashboards.htm
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取引先が関連するオブジェクトのリストビューや検索でもいくつか 機能改善があります。
取引先責任者のリストビューで、取引先項目が使用できるようになりました。
今までは取引先名だけが使用可能でしたが、例えば取引先の都道府県名や業種などで絞り込みが可能になってい ます。
Lightning Experience での取引先条件を使用したリストメール用の取引先責任者の検索
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/rn_sales_ contacts_account_fields.htm
商談を検索した際に、一覧に取引先名が併せて表示されるようになりました。
これで商談名に会社名を入れなくてもどの会社の商談か見分けられるようになりました。
この挙動は取引先責任者の検索時も共通です。
取引先責任者または商談を検索するときの関連する取引先の参照
https://releasenotes.docs.salesforce.com/ja-jp/spring20/release-notes/einstein_search_ related_account.htm
各機能の詳細、およびリリース全体の概要については、冒頭のリンクよりリリースノート全文をご参照ください。
関連 Trailhead: Spring '20 Release Highlights
https://trailhead.salesforce. com/ja/content/learn/modules/ spring-20-release-highlights
(2/27 時点で未翻訳です: 翻訳が完了すると自動的に日本語表示されます)
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Spring '20 の新機能紹介の二回目、いかがでしたでしょうか。
今回の更新は、全体的に「目を見張る新機能というよりは、従来の機能を丁寧にブラッシュアップするものが多い」 という印象です。
レポートの数値項目比較とユニーク数集計、ToDo のキュー対応、カスタムボタンの LEX 対応などは、実際にユーザの要望を踏まえた上での実装なので、Salesforce をお使いの皆様も、「この機能があったらいいのに」 という要望がございましたら、コミュニティに投稿することで、将来のリリースに反映される可能性は大いにございます。
(この機能があるかどうかわからない、コミュニティの投稿方法がわからない、などは、お気軽にサポートまでお問合せください。)
次回は Service Cloud 編をお送りする予定です。
今後ともウフル カスタマーサポートを引き続きご愛顧いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
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